赤ちゃんポストで救われる命が増える可能性について考えてみる

2007.02.08

  赤ちゃんポストに関して関西系の某番組でやっているのをチラリと見た。何年か前にTV番組でドイツの実施状況が紹介されていてるのを見た記憶があり、日本も早期に見習うべきだと思った。物心がつくずっと以前に、実の親同様に慕われる里親ともらい子の関係が構築されるならば、後の人間形成に良い影響をもたらす事はあきらかで、それに越した事は無い。

昔は、捨て子や貰い子の話をよく聞いたものだ。実際、私も幼い時に捨て子らしき物を見た記憶もあるし、私の親戚にも子宝に恵まれず、子供を貰った夫婦もおり、私も子供の頃は、兄弟のように一緒によく遊んだ記憶がある。(因みに、既に、その夫婦は二人とも他界されている) 折角、生を受けた人生、たとえ望まれなかった命であったとしても、誰もが健全にまっとうできる環境を、社会が協力し構築すると言う事は、素晴らしい事だと思う。

さて、赤ちゃんポストを容認する事で、捨て子が増える、無責任な母親が増えるのではないかと言う意見もネットにはあるが、捨て子ならば、身近な場所で手軽に実現できるコインロッカーベイビーなどに代表されるように、わざわざ病院などの公的で安全な一時預かり所を兼務する赤ちゃんポストに赤ん坊を委ねる女性も少ないように思われる。実際、先進国のドイツでは既に80箇所設置されているが、年間わずかに40件ほどの利用しかないとの事らしい。また、10代などの養育能力の無い母親の利用が期待されているが、ドイツ連邦統計局の2000年から2005年までの中絶の統計によれば、全体としては減少傾向の中、10代の中絶数は5年間で15%程度の上昇となっている。(因みに、2005年のドイツの年間の中絶数は12万件以上)

日本における中絶統計もドイツの状況と類似している故に、赤ちゃんポストが中絶の減少などに多大な影響を与える効果は期待できず、慈恵病院理事長の番組でのインタビューの談話で言われていたような、パニック状態に陥った未熟な母親を落ち着かせる事で、捨て子等を減らす効果が主たるものではないかと思われる。

しかし、日本特有の婚外子の極端な少なさに視点を移せば、状況は一遍する可能性があると推測する。ドイツなどのヨーロッパの婚外子は、国によっては日本と数十倍の開きがあるが、これは婚姻を伴わない出産が容認されている社会である故に起きている現象だと思われるが、赤ちゃんポストの設置によって、10代では無く、20才以上の(不倫などによる)婚外子ができた場合、必ずしも、中絶と言う選択肢を取らなくても良いのではと考えるきっかけになる可能性もある。少子化対策には効果があるかも知れないが、無責任な親を増やす事にもつながりかねない為に、この点は賛否両論がわかれるところではないだろうか。(しかし、不倫による婚外子が全て遊びによる無責任なものであると言う短絡的な解釈もいかがなものかなと言うのもある。これが、昭和テイストのお涙頂戴のドラマなら、悲劇的な母子として描かれる事も珍しくは無いと思うのだが。昔は、おめかけさんもいらっしゃいましたが、今のような愛人などとしてでは無く、養子・養父に近いような、博愛主義的な話も少なくなかったような気がします。)

もちろん、医療従事者でも無い門外漢である故にとんちんかんな見解である可能性もあり、法的な問題にも無頓着なままに外野から好き放題な御託を並べている凡愚であり、故に平然と心に思うままに書けるのであるが、ともあれ、赤ちゃんポストのような、民間発の、命を亡くさせないとする意識の広がりが定着する事で、希薄となりつつある人の命の重たさへの意識も強くなるような、社会的なプラス面を尊重したいと私は思う。

死によって生を理解させようとするようなTV番組が多い昨今、(誰もがわかっているつもりになっている)生きる、生かす為の懸命さによって、命の尊さを感じさせうる機会を増やす事こそ、重要なのではないだろうか。

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