実践的、大地震への備え。
以前より『震災をビジネスにするな』 などと述べてきたとおり、ビジネス先行で検証が後手になった事で、有効性が確認できないどころか、逆に住民に不安を煽ってしまった緊急地震速報や、先の中国四川省大地震もあって、日本国内での大地震への備えの意識も、再び強まりつつあるのではないかと推測します。
大地震への備えとしては、阪神大震災被災者として、以前にも震災10年目に思うで、"震災への備え”として述べていますので、重複する箇所もあるかとは思いますが、この機会に、実践的に役立つ大地震への備えとして、簡潔にわかり易くまとめておこうと思います。
個人的に記憶している内容から、ざっと思いつくままを書き連ねただけなので、他にも役立つ備えが多々あろうとは思いますが、何か参考になる点がありましたら、幸いです。
一人でも多くの世間、ご近所様と日頃から付き合え
直後は電話・携帯による連絡手段が取れないので、友人・知人や親戚縁者の助けは皆無であり、行政などによる救援の手が来る頃には、あなたは圧死か窒息死している可能性があります。
命に別条は無くても、ライフラインが復旧するまでは、水、食糧や最低限の寝る場所などを確保せねばなりませんが、行政などの助けが来てくれる保証はありません。
このような状況の中、最も期待できるのは、あなたの顔と名前を知っている、ご近所さんが一人でもいる事です。あなたが大丈夫かどうか、どこかに埋もれていないか閉じ込められていないか、ちゃんと配給が届いているか、などを気遣ってくれるご近所さんがいる事です。
特に、一人暮らしの学生さんやOL・サラリーマンならば、田舎から送ってきたものとかなんとか言って、スーパーで買ってきた安いものでいいので、おいしい物を日頃からご近所さんにでも配り歩く事です。特に、イザと言う時に役立つ、情報通のお年寄り達は、食べ物の恩は必ず返します。また、大人ほど利己的では無い、子供に好かれておく事も大事です。
水は腐ってもいいからペットボトルに溜めておけ。
震災直後に最も必要なものは水です。
水は飲む以外にも、震災で汚れた部屋を掃除したり、トイレに流したりと、かなりの量を使います。よく浴槽に溜めておくと言う話がありますが、大地震ならば、浴槽の水は全て溢れ出て使い物になりません。また、地震直後に断水が起きる可能性もあり、起きた後で貯めればいいと楽観視もできません。
空のペットボトルがあるならば、何本でも水を貯めておき、部屋に置くスペースが無くなれば、猫避け兼用として屋外にも置いておくと良いでしょう。
当時は、給水タンクの支援による配給もあまり期待できず、経験的には、井戸などの情報のほうが有益で、地域によっては、川から水を汲んでいたり、洗濯などもしていました。
カセットコンロか、石油ストーブを買っておけ
電気やガスによる調理法しか無いならば、当分の間は、冷えてローソクのような味になった弁当か、パン程度の食生活になり、体力も衰えます。せめて暖かいスープなどの飲み物が欲しいと言う場合は、カセットコンロや石油ストーブが必要になります。
もちろん、ドラム缶に倒壊家屋などの木材を入れて火を起こし、それで食事を温めると言う方法もありますが、一般家庭においては、置いておく場所にすら苦労するドラム缶よりも、コンビニでも手軽に買えるカセットコンロを準備しておくほうが、遥かに簡単です。
レジ袋や段ボール・新聞紙は沢山貯めておけ。
案外使えるのがレジ袋や段ボール。バケツが無い場合などレジ袋で水を汲んで貯めておけます。水道管が破損している場合など、レジ袋で締める事ができます。粉上にまで破損したガラス・コップ・陶器などを、まとめて入れておけます。ガラスの破片が散乱した部屋でも、段ボールを敷けば、比較的安全に歩く事ができます。スリッパや靴(土足)だけでは中にガラスの破片が入って来るので安全ではありません。ガラス窓などの破損箇所は、新聞紙や段ボールを貼っておけば、暫くは寒風を凌げます。
これらは、 殆ど無料で手に入り、捨てる場合でも惜しくは無い物ばかりなので、邪魔にならない範囲で貯めておいたほうが良いでしょう。
電池とローソクは、十分に買い置きしておけ
何が不安と言って、情報が全く無い事と、夜中が真っ暗になる事です。
電池があれば中波ラジオは聴けますので、被災状況や救援状況の把握ができます。被災者は身近な被災状況はよくわかっていても、全体で何が起きてどうなっているのかを全く理解できません。そのような不安を取り除く事ができます。
また、夜中、多少なりとも明るさがあれば、安心な気持ちになれます。余震の恐怖が残る中、人の顔も見れない、動く事もすらもままならない、真っ暗な状態の中に居続ける夜が続くと、精神的に参ってしまうでしょう。電池用ライトなどを使う手もありますが、電球の消費電力は極めて大きく、電池は幾らあっても足りません。そう言う意味でリーズナブルで長寿命のローソクは、役に立ちます。
試しに、夜にブレーカーを落として、一晩中全く電気を使わないような体験をしてみて、そのような状況下で、何が必要でどうすればいいか、ご家族で話し合われるのもいいかも知れません。
(追記:想像力の無い方の為に例えて言うならば、暗闇であると言う事は拘束状態に近いとお考え下さい。暗闇の中、下手に動けばガラスの破片などでケガをします。また、真っ暗闇の中で歩いている途中に余震が起きれば、大きな怪我をしかねないと言う恐怖もあり、あまり動けなくなるのです。もちろん、十分な睡眠も取れません。誰かが夜中に起き、余震や火事などの番をして、昼間は番をしていた者が眠ると言う具合になります。私は、殆ど眠らずの状態が1週間程度は続いたと記憶しています。)
最低でも、ハンマーは買っておけ。
壊れた家の補修をする為ではありません。家を壊す為に必要な道具を揃えておく必要があると言う事です。
地震で家に家族や知り合いが閉じ込められてしまった場合、或いはドアや窓が動かなくなって、部屋や家から出れなくなった場合、脱出する為には、家を壊す必要がありますが、その為の道具として、窓やドアを壊す為に、ハンマーやノコギリがあれば便利です。
車のガソリンは、カラにしておくな。
車で逃げ出す準備をしておく為とか、買出しに車がいるだとかではありません。寸断され、穴ぼこだらけの道路ならば、車で運転なんて事はできないからです。
家が壊れた場合、もし、避難所が定員オーバーなどで入れなった場合の当分の住居になるのが、車になります。その車で寝泊まりする際、夜間の冷えを凌ぐ為に必要なヒーターを回しておく程度のガソリンは入れておく必要があります。また、カーラジオでの情報が得られたり、シガーソケット経由での電源供給により、パソコンや家電製品も利用可能です。
最後に
他にも、震災グッズなどとして、あったら良さそうな物は幾らでもありますが、ネットでも見かけるそれらセットの類は、業者が売りやすい物を売ってるだけの商品に見える面もあります。”あったら便利”などと言う発想が活かせるような場では無い状況である事を、まず認識したほうが良いでしょう。
最近は、震度7シミュレーター(実験装置)も、リアルなものも登場してきているようですが、テレビの地震関連番組などで見られるタイプの物は、無暗に危険性を煽らないようにフィルターをかけたような物に思えます。
前後左右などの堪え易い動きでは無い、真下から断続的に突き上げる直下型で激しい振幅の地震に襲われた場合、本当に何も出来ません。動く事が出来ないどころか、凄まじい轟音・破壊音と振動で、思考も抑圧され、意識すら遠のきます。(何度か書いているように、体が宙に浮いた事もあり、「あぁ、死ぬんだ」と、私は覚悟しました。)
もし、緊急地震速報が正常に機能し、震度7が来ると言う報知があっても、震度7クラスの大地震ならば、できる事と言えば、その間に家族に声をかけて、じっとしておく位なものではないでしょうか。何もできないでしょうし、地震がおさまるまでは何もしないほうが良いように思います。
大地震と言う人生を大きく変え、運が悪ければ、あなたかあなたの大切な誰かを亡くしてしまうかも知れない天変地異を迎える準備をするのならば、日頃から人生を大切に生き、悔いの無い生き方をし、精神的にも肉体的にも鍛えておく事が重要ではないでしょうか。
大地震への備えとして、震災に強い家も必要でしょう。しかし、当時、築2〜3年ほどの鉄筋コンクリートの家でも、マッチ箱を壊すように倒壊していた光景を昨日の事のようにハッキリと記憶している者としては、懐疑的に思えてしまうのです。
震災に負けない、強い人間になる事であり、震災に強い人間関係を日頃から構築しておく事。
大地震への備えとしては、これが最も重要ではないかと思います。
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震災後からすれば、営利等を目的とした地震の備え的な情報のほうが明らかに増加しているように思います。安全はお金で買える面も多々あろうとは思いますが、お金さえ出せば安全はいつでも買えるような物では無く、日々の積み重ねの上に、安全は保たれるもので、その中に有料のサービスや商品なども含まれるのであろうと思います。
今回は、(震災当時住んでいた須磨区の)主に私と私の家族やご近所の方々の震災体験などから、特に強く記憶している事から、ご紹介させて頂きましたが、機会があれば、現在の住居のある、長田区のご近所さんのお話などもまとめてご紹介したいと考えております。
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