映画 ありがとう 神戸の震災をリアルに再現した映画。
安倍内閣の組閣の特番を見た流れで、夕方のローカルニュースを見ていたら、赤井秀和が舞台挨拶に立ってる場面が目に入った。阪神大震災の映画の舞台挨拶と言う事で、赤井さんなら、(失礼ながら)シリアスな映画にはなってないだろうと思ったが、ダイジェストの予告映像らしき物を、『うんうん』と、少しうなずきながら、見てしまった。役者は、明るく元気でガッツのある関西人であれば良かったので、赤井秀和氏の起用もありだなと言う感じで、それよりも、映像のリアルさ、忠実さに、今までにない震災関連映画として評価できるように思う。CGや当時の被災映像だけでは無く、実際に、数百メートル四方の商店街のセットを建設し、爆破、焼失させ、阪神大震災のリアリティーのある映像の再現に全力をかけたらしい。
映画「ありがとう」公式サイトの http://www.arigato-movie.jp/ でも、予告編映像が見れるが、震災直後の映像はかなり短く、画質もあまり良く無いので、あまりよくはわからないかも知れないが、地震発生直後の特撮映像の中では、阪神大震災を体験した者としては評価に値すると思う。但し、ローカルニュースの番組で流れた、発生直後の家屋内映像の再現にはやや疑問を持った。部屋中の物が飛び出し、乱舞し、沸騰し、破壊される様子や、その時の人の反応と言うのは、少し違うように思われる。多分、体験した者でないと、そこに”こだわり”を入れる事はできずに、再現は難しいのでは無かっただろうか。「ありがとう」のプロデュサー 仙頭武則氏は、実家が宝塚で、家族が被災にあわれている故に、この作品ができ、思い入れも強い事は伺えるが、断層直上近辺の地域での地震発生直後の家屋内部へのフォーカスは、ややブレている印象を受けた点は、真実をよりリアルに伝える事が防災につながると言う意味においても、やや残念な印象だ。(尚、「ありがとう」のサイト内では、仙頭武則氏の舞台挨拶映像の中で、この作品への思いいれを伺える場面が、”劇場情報”から見る事ができる。予告編よりもお勧めしたい。)
ともかく、最初の地震で、私は人の声を聴いた記憶は無い。確か、十数秒後〜数十秒後(ここの記憶が定かでは無いのは、死んだと思っていた事で、時間の感覚が麻痺していたからだと思う)に来た、次の地震では家族の者を含めた隣人の声は聴けた。もしかししたら、それは第2波が最初の地震よりも弱かった為に、物が激しくぶつかり合う音が小さくなり、人の声が聴けた可能性も否定はしないが、まだ眠っていたか、驚きと恐怖で声が出なかった人が大多数であったと考えたほうが現実的ではないだろうか。私の、震災体験 にも書いてあるような心境で、あの瞬間、起きて、状況をきちんと理解しながら、考察していた人ならば、『もう、死ぬな』と本気で覚悟した人も少なく無かったのではないでしょうか。
映画、「ありがとう」は、神戸の鷹取商店街(須磨区に接した長田区)の熟年被災者が、全てを失ったカメラ店主から、町の復興に貢献し、還暦を迎えながらも、プロゴルファーへと転身した事実に基づくストーリーで、タイトルの”ありがとう”は、今の自分を生かしてくれている人への感謝を表したもの。被災者ならば、生かされている意味、生きている意味、生きると言う事をあらためて考え、見つめなおした人は少なくは無く、共感できる点も少なくは無いでしょう。
因みに、この映画の原作は、還暦ルーキー。レビュー記事を読むと、プロゴルファーに関心の無い者でも、この映画には興味が沸くかも知れない。
ただ、この作品は、被災者の光の部分であり、影の部分では無い事も忘れてはならない。震災から10年に書いたように、震災後も、非常に辛い思いをし、今も尚、個人の復興ができていない、以前の幸せを取り戻せていない人々も多数いると言う事は、神戸市の復興イメージアピールで、地方の方が忘れさったとしても、少なくとも、被災者を経験してきた私たちだけは忘れてはいけないと強く思っている。
残念ながら、私は純粋に「ありがとう」と言う気持ちにはなれない。もちろん、震災後に頂いた日本全国の皆さんからの100通以上の励ましのお便りなどには、強く感謝し、常に何か自分にできる事、世の中の役に立てる事を考え、このようなサイト運営にも携わってきているが、行政などには一部の方を除き、支援では無く、全く逆のような対応を取られ、感謝では無く、恨みしか残っておらず、それを思うと表情が険しくならざるをえない。(支援を望む訳ではない、生きるのを邪魔するかのような事を平然とされて、感謝する筈は無いと言う事だ。) また、国内企業に対しても、全てでは無いが、感謝の気持ちを持てない所も少なくは無い。今、私が、こうして生きていられるのは、日本では無く、海外の企業によるものが大きいのだ。(そう言う意味では、小泉政権の、規制緩和政策は、日本のような、既得権益を持つ者達によって、出る杭は抜かれて焼かれて灰になるような社会でも、弱者でも真面目にコツコツと頑張ればなんとかなると言う面を示した点で、有り難かった。一部で弱者切捨てなどと言って批判している者もいるが、その逆だ。私は小泉政権の政策には感謝している。)
白状すると、今は、長田区の住民になっている。震災時の特番などで、多分、最も映像が頻繁に流れた場所から歩いて数分のところなのだが、被災の規模は実は、前の須磨区の実家近辺のほうが酷いような印象だ。(断層にかなり近かったからだろう) 前の須磨区の(多分、壁の中がグニャグニャで、基礎もひび割れ状態で、鉄骨もきしみが酷く、修復不可能で立て替えるしか方法の無い、見た目は大した事も無さそうな)家では、夜間の大型車や鉄道(JR)が通る度に生じる、(特に2階は、震度1近いような事もある)揺れで、とてもでは無いが、家族全員が落ち着いて眠れずに、 薬に頼っている状態では、いつまでも体が持つ訳がないので、こちらへ越してきた。
ただ、「ありがとう」とは素直に思えないが、「ありがとう」と思っている人には、同じように、そんなあなたが生きてる事に「ありがとう」と思いたい。
結局のところ、あいかわらずのボンクラで、何もできない小市民なのだが、地域の復興イベントには、何か協力したいと思っている。
映画は、2006年11月25日より 全国ロードショーを予定し、収益金の一部は、阪神淡路大震災、新潟中越地震の震災復興義援金などに寄付される模様。尚、プロゴルファーへの道を描いた長編の予告編映像は ランブルフィッシュ で見る事ができる。
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