TV番組

2004.03.19

 PSXのお陰で、ためてある番組を観る機会が増えています。深夜映画(死語)の代わりに見る息抜き程度のつもりが、流石に良い番組は、最終回にも近づくと、見入ってしまっている自分がいたりして、驚いたりします。

『白い巨塔』

当時、まだ子供だったので、大人の深い理屈までは読めませんでしたが、俳優・田宮二郎、ゆえになしえた作品。ゆえに、そのネームバリューのみで… とタカをくくっていたので、中盤辺りから奥様につられて見てましたが。案の定、漂う重さが違うし、当時のような聖職者たる医師と言う確固たる既成概念を破壊した悪行の衝撃、たとえフィクションであれ、それを映像化しお茶の間を見せつけた事すらへの是非なども感じた程ですが、あるまじき医療事故が日常茶飯事化し、医療が受けられるサービスである事となった現在、当時を超える何かがあるとは到底思えませんでした。 が、最終回を見切って、そんな古い頭でしか見ていなかった自分の視野が狭かったと、つくづく思わされました。(そんな、魔女探しのような子供だましが通じるようなご時世では無いですからね。そんな世界は、全く頭を使わなくても良い、痛快娯楽ドタバタ系アニメでしか見る事ができないと言い切っても良いでしょう。でも、わかり易さと大人も楽しめる面白さは、両立するし、もうそう言う物が出てきても良い筈と思ってる人です。私は)

当時の匂いを漂わしたのは、せいぜい伊武雅刀の小憎らしい演技のみでしょうか。最終回での、財前五郎の台詞”無念”。台詞の先読みをするのは好きなほうですが、利己的な”悔しい”で無かった事の意外性が、エンディングでの現代の聖職者としての1人の医師としての、意思貫徹のポリシーに繋がったと。これも1つの男の生き様なのだろうなと。

医学的知識も無い部外者がお茶らけた事を書くのは、好きでは無いのですが。このドラマの中盤以降での、面白い点は、インフォームドコンセントを行わずに、行った患者(佐々木庸平)のガンの手術が、どうであったかを問われた主人公である医師が、お約束ごとのように、患者、家族に手術以外の延命治療の方法の選択肢を示さず、よく検査(手術で切除した食道ガンのみでは無く、それ以前から転移していた肺がんによる患者の死亡故に、入念な検査が必要であった筈)と説明(食道ガンの手術をすれば治るとは断定できない)をしなかった事実を隠蔽工作し、説明責任を問われ、結果敗訴します。しかし、その医師は、敗訴と同時に肺ガンを患っている事がわかり、初期段階と言う初見から、手術に臨むも明らかに手遅れである(肺ガンでは、CT検査のみでは進行状況がわからない事もあり、この場合、開胸して初めてわかった)事が執刀医にわかるが、財前医師本人には告知されず手術は成功したとだけ告げられる。しかし、財前はその後の術後の状況から、的確に自分の本当の病状を診断し、死を穏やかに覚悟し、延命治療も望まず、間もなく、人生をかけた目的達成の目前で死亡し、自らの遺体をガン研究の為に捧げる訳です。

この対比で興味深いのは、最終回の医師が自分自身の肺ガンに対する対応のあり方から見て、医師は肺ガンの専門医では無く、自慢(自らの慢情)故に、患者を亡くしたと言う設定が、或いは、医師財前は、患者が完治が困難な肺ガンである事を悟った上で、患者・家族の事を考慮し、(独善には変わり無いですが)最良の選択を貫いたのではないかと言う”説”も考えうる訳で、中盤からのストーリーが根底から覆されてしまいます。

基本的に、番組の最後で語られた、自戒を込めた”遺言”が、最もこのストーリーを象徴する物であり、これだけの高視聴率を得た番組制作側の燐とした姿勢を評価したいと思う。
未だ、癌は治療によって完治する病では無く、自らが早期発見、早期治療を行う事で、防ぐ事のできる難病である事に変り無いと言う事。

あくまでフィクションです。でも、少なくとも、煙草の本数を減らそうと思った。

PS

あとは、アニメだけですね。Gungrave,ハーロック,アトム… アトムは大人でも十分に面白い。

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