庵野版シンゴジラ、映画後半はシン・エヴァンゲリオン予告編。

2016.07.30
シンゴジラ

 昨日、庵野版シンゴジラを見に行った。率直な感想を書く。特にレビューやネタバレも意識しないしそれが目的では無いが、そうなってしまう箇所は多分にある。しかし、このゴジラは稚拙なネタバレ程度でその映像まで完璧にイメージできる特撮映画などでは無いので、このような前置きすら蛇足かと思う。尚、パンフなどの類は購入してないので、用語などは多分に正確では無い場合がある事をご容赦頂きたい。また前述のように私は幼少からゴジラなどを見てるので特撮好きではあるが特撮マニアでは無い。

 全体的な構成は、ある程度予想どおりだった前半のゴジラと言う天災に対応する日本政府の無能さを描いた大震災風怪獣映画と、後半のシンエヴァンゲリオン予告編的な或いはエヴァのヤシマ作戦実写版的な映像。

点数をつければ、前半77点で、後半73点。平均75点と言う感じだろうか。

後半の説明付けのチーム内での会話のやりとりの尺などが長い。「おぉ」と言うほどの物は無く想定の範囲内程度でVSビオランテのG細胞を超えるクラスの何かしらのSF的要素があったか訳でも無いので、そこは簡潔にして、主に破壊シーンになるだろうが、シンゴジラの3DCGをもっと見せて欲しかった。

シンゴジラ

 印象に残ったのは、前総理と後任の臨時総理のワンカット。

 前総理役の大杉漣が、首都東京を見捨てヘリで逃げようとした時、「何をするつもりなんだ」と言ったあと、米軍から攻撃され激怒したシンゴジラが口から業火を吐き、東京を火の海にし、1954ゴジラの時のように、燃え盛る東京を悠然と歩く。ここが一番の見どころかもしれないが、もう少し尺を長めに取ってほしかった。見る者の大半もあの直前に何が起きるかわかっているので、ここは溜めがあっても良かったと思う。

 国の機関がボロボロの中で無理やりやらされたような形だけで「総理ってタイヘンなんだなぁ」みたいな他人事でラーメンがのびてるのを気にするような後任の臨時総理大臣役の平泉成が、実は、自分の役割を熟知していて、フランス大使に頭をずっと下げ続けて多国籍軍の核攻撃から日本を守った影の立役者だったと言うカット。実は侍だ。

シンゴジラ

 面白い演出と思ったのは、無人電車爆弾。

 小さなドローンでさえ一瞬で破壊する防衛機能を持っている為に飛行物体はシンゴジラには近づけないと言う事からか、爆弾を積んだ在来線の電車がシンゴジラに特攻するのですが、多数の車両が左右から同時にぶつかり爆発炎上して車体が宙高く一斉に跳ね上がるシーンはユニークで面白かった。

 エヴァのBGMを頻繁に使っていたのは、個人的にはパロディ的なイメージが強くテンションは逆に下がっていったが(BGMは2回位に抑えて欲しかったなと)、劇場版エヴァ待ちの人にとっては、これ以上に無いゴジラ映画になったのかも知れない。

 シンゴジラの体中(赤く光る部分)から、熱線(と言うか昔のゴジラの放射能光線をシャープなレーザー光線にしたような光線)を出すのも、アレは出るんだろうなと思っていたし、ゴジラが超越した完全生命体的な存在になるんだろうとも思っていたし、映画の最後のカットで登場する尻尾に生えてる人間のように、あの違和感のあるボディは人間などの有機生命体との何らかの関わりを見越してるんだろうなとも思っていたので、その辺りでことさら新しい発見的な物は無かったように思う。個人的には、進化するゴジラなのだから、ゴジラがロケットパンチしてくれてもガメラのように足が引っ込んで空を飛んでもいい位と思ってる。

シンゴジラ

 惜しいのは前半の政府,総理の対応。

 国民の安全よりも政治家や政党としての立場を優先しているらしき説明やセリフ、何でも想定外やマニュアルが無いなどで逃げる無責任さはよくわかるけれども、その演技がまだ貧弱、最後は自分達だけ首都から逃げようとしてシンゴジラに殺されるのだから、もっと憎たらしくやらせても良かったと思う。

自衛隊に攻撃命令を出さないのも人命優先では無く、次の選挙の事やマスコミに叩かれるのが怖くてできないレベルにまで下げてやれば良いのに思った。基本的には東日本大震災での旧民主党総理菅直人を想定しているとは思うけれども、結局、最後はなんでもかんでも押し付けられて困ってるあの大杉漣ならば、少しかわいそうな総理と言う印象すらある。傲慢で無責任且つ無能な総理にする事で、後にリーダーとして活躍する内閣官房副長官役の長谷川博己が生きたと思うのだが、そのギャップがそれほどでも無い。

それと、団体がゴジラを殺せと言っていたシーン。シールズ風の団体?では無く、もっとリアルに被災者達がゴジラを攻撃しない政府へ抗議するようなシーンにしたほうが良かった。被災者の避難所のシーンはあったが、無能な政府やゴジラへの怒りの描写が薄かった。大切な家族を一瞬にして失った被災者の怒りを描けばまた変わった絵になっていたろうにと思う。

シンゴジラ

 あと、意外に良かったのが市川実日子の演技。

ノートPCを操作しながら、第1形態の海中を泳ぐゴジラが2足歩行でき上陸する可能性を的確に考察して会議でズバズバと述べているシーンなどは、爽快だった。長谷川博己が出ているんだから、理系女子ならドラマデートが好評だった長谷川博己と共演した女優の杏でも良いんじゃないかと思うが、市川実日子も頭脳明晰な理系女子を十分に演じきっていた。

他の役者で意外に印象に残ったのが自衛隊員役の斎藤工。戦車に乗って操縦し最後はゴジラに殺されるだけなのだけど、2枚目でも濃いめの顔故に、狭い戦車の中でのドーンと顔アップと言うが一番印象に残る役者なのかも知れない。

シンゴジラ

 今後どのように評価されていくかはわからないけれども、この作品はより多くの日本人に見て貰おうと言うよりも、何度もリピートした上にブルーレイまで買ってくれるエヴァのファンなどをを意識して作られたように思う。要は万人受けするハリウッドクラスの手抜きの無いフル3DCGバンバンにまですれば金がかかる故の演出なのでしょう。

劇場では、夏休みの昼間と言う事もあり、子連れの客も少なくは無く3〜4割位はいたと思うが、退屈してないかと、後半は映画の画面よりもそちらのほうが気になっていてチラ見していた位だ。

 個人的な評価の点数は75点だけども、夏休み映画として見るべき映画としては、ポイントは後半のエヴァのBGMでの尺の長いやりとりのシーンをどう見るかになると思う。

ここが難解でわからないけど退屈では無い、又は何を今さらな的な話ではあるが退屈では無い、或いは無視してスルーできるならば、ごく一般の人でも見る価値は高いと思う。

蓋を開ければエヴァファン大絶賛?作品だったが、見どころは多面的なので、カップルでも親子連れでも往年のゴジラファンが見ても楽しめる作品である事は間違いない。特に、理屈が難解でわからないだろうから子供には見せなくていいと思う親御さんもいるかも知れないけれども、人間はこのような物すら創造する能力があるのだよと言う事を幼い内に無言で教えておける良い機会と思える親御さんならば、強くお勧めしたい作品の1つである事は間違い無い。

ただ、過去の日本のゴジラ映画の形に強い思い入れのある人には本作は難しいかも知れない。シンゴジラは新ゴジラと割り切るべきだろう。特に目立った事前情報を知らせず東宝がシンゴジラを宣伝しているのは正解だと思う。特に第1形態の造形はインパクトありすぎてて酷い。あれはゴジラでは無く使徒だ。

シンゴジラ 7月29日劇場公開

 神が遣わした超進化生命体或いは、新しい神としてのゴジラの詳解やSF的な解釈。そもそもキーマンとなっていた科学者は冒頭漂流するヨットからどこに姿を消したのかやそれまでを語るシンゴジラ研究の詳解や、そもそもシンゴジラ出現の目的は何か、サードインパクト的なものかなどは、マニアックにならざるをえないのでアニメ版シンゴジラなどでやったら面白いんじゃないだろうか。因みに、後半のゴジラが四つん這いのまま熱線を吐くシーンなどは巨神兵に見えたので、これはジブリもアリかもと思った。

 最後に率直に本作をまとめると、庵野版シンゴジラは、庵野氏本人の告白が本当で、エヴァQの後に予想以上に病んでしまっていたんだろうと推察できる庵野氏のリハビリ作品かなと言う事になるだろうか。

 あとになってしまったが、故・伊福部昭氏のゴジラ音楽はふんだんに使われ、シンゴジラのシーンとも爽快にマッチしていた。

追記:時間が無いので、ざっと簡単にネットを回ってみましたが、ステマぽいライターによる宣伝レビューも紛れてるようですが、ごく一般の人でも庵野氏を評価するレビューも多いようです。ただ、本作は型破りの庵野氏本来の能力がまだ存分に発揮できてるとは思えないので、「いやいや、こんな程度と思うなよ」と言う意味合いでのリハビリ作品と言う印象です。もうね、ウルトラマンvsゴジラvsガメラ位はやって欲しいんですよね。これができるポジションて、庵野氏位しかいないでしょ。

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