DVD感想 千年女優 アニメ

2004.09.15

 平沢進氏のテーマソング(ロタティオン)も好きだった事もあって、TVでもよく流れていて、映画予告編などでも紹介していた2001年の劇場用アニメ作品です。但し、アニメと言うよりも、大人も見れる日本映画としてみたほうが良さそうです。

 既に、少し前の日記のほうでもちょこっと書きましたが、最初の感想は『裏切られた』と言ったところ。ストーリー的な予備知識を殆ど得ずにDVDや映画を見るほうなので、CM(予告編)からのストーリーの推察のみで見ましたが、SF的な作品では無く、千年生きてるような女優を描いた作品でも無いですし、”千年かけても会いたい人がいます”と言うキャッチコピーのように、千年かけて恋い慕う人を捜し求める映画でもありません(^^;(『あの人は年をお取りにならない』だったかの最初のセリフに少し期待したのですが…)

 SF的?な部分は、引退した主人公の女優と(彼女を密かに恋い慕う、映像プロダクション会社の)インタビュアーとの昔話が、時空を超えたそこにある現実のようにビデオに納められて行くと言う全体の流れ辺りでしょうか。監督はPerfect Blue(パーフェクトブルー)の今敏(こんさとし)監督ですので、同様に(やろうと思えば)ドラマでもでできる作品をアニメにしたのかなと言う所でしょうか。手法としては同様に時系列を巧みに操って、観る物を錯覚させる点は面白いです。しかし、全体的には実験的ではありますが、アニメとしては、革新的、斬新なアイデアには、もうひとつ力強さを感じられなかったのが残念です。敢えて、いかにもアニメらしい手法は使わなかったのかも知れませんが。

 ストーリーとしては、『会って鍵を渡したい…』 主人公千代子が、女高生の時に出会った、戦犯の絵描きが残した大事な鍵を返してあげたい… その一心で女優となり、その鍵の君を思い慕い探すストーリーが数々の名画を生み、大女優への階段を歩んで行く… と言う内容で、絵的には千代子の生き抜いた昭和よりも大正ロマンが画面から滲み出てくるようなイメージがある、海外向けの日本文化紹介アニメとなっているように思う作品です。多分、PerfectBlueのように、外人には高く評価されると思います。

印象に残っているのは、時代を駆け抜けてきた大女優の象徴、或いは、愛しい人に会いたいと強く願う一途な女性を描いた、主人公”千代子”の走るシーンがやたら多かった点と、実は千代子の影(深層心理)を投影したかのような老婆が幾度となく登場し、千代子の命運を握る重要なキーパーソンになっている点。辺りでしょうか。あとは、映像のハチャメチャなつなぎ方、絶好のタイミングでカメラマンがツッコミを入れた、姫の七変化で”くの一”になる場面などもそうですが、予想の範疇を超えた怪獣なども登場する場面への急転換は、うる星やつらを彷彿とさせ、少し笑ってしまいました(^^;

 ”スター”は光り輝いてナンボでしょう。ここ10年位は”オーラ”と言うほうがわかり易いのでしょうが、一般人と違うのは、本物のスターは、カメラの前では本当に眩しいほどに光り輝いている点で、その為には(多分)プロとして想像できないほどに弛まぬ努力を続けているんだと思います。『いつまでも恋心を忘れない』事が女優の条件とも言われますが、千年女優の主人公千代子は、追い求めていた、鍵の君の死を知った事や、鍵の君の知っているあの頃の自分では今は無い事で、恋慕う気持ちが萎え、銀幕を去ったのでしょうが、老いて死が近づき、あの人の元へ行けると言う思いから、再び、恋慕う女優として復活し星への旅立ちへと向かった… と言う事なのでしょうか。

「だって私、あの人を追いかけている私が好きなんだもん」

この最後の台詞が、女優として生まれるべきして約束して生まれた女性の一生を描いた作品である事を象徴しているのではないかと言う気がします。

大人が見る上では、そんなに印象に残る作品では無いのですが、1度見たら飽きるような作品では無いと言う点では、上質のアニメ作品なのかも知れません。

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