blogに思う

2004.07.07

早々と無料blogのページでも、”無料blogとは”などと、好き勝手にのたまっているし、今更と言う気もするが、実際は、”これからはblogだぞ!”のような、トップダウン的な流行だからと言うよりも、口コミ的な(ネットの)お友達が増えていく感覚で、ユーザーの増加が意外と顕著に思えるblog。そのblogについて、いわゆるbloggerとしてでは無く、またマスコミのウェブ関連のライターでも無い、日本の無料サイトを衰勢を外野より観察してきた、愚者の一人としてのたまってみようと思う。特に小難しい事を述べる気は無いが、万人に理解して貰えるような事も書く気は無い。本文は、あくまで『おたわごと』の1ページであるので、予めご容赦をば。

blogはホームページよりも優れているか?

 blogは、一般にはホームページよりも簡単に作れる。無料blogならば、アカウント取得から初期設定まで数分以内で終わり、あとは、無料掲示板や無料日記のように、記事や写真、画像を投稿すれば良い。1記事の投稿だけで、サイト内容の全てが自動的に更新され、トラックバックやping送信によって、関連するblogやblog情報サイトにもその旨が通知され、”ホームページの宣伝活動”も不要だ。サイト運営で最も厄介なアクセスアップ作業が不要になり、サイト運営者は魅力ある記事の作成のみに注力できる。

 と、一見すると至れりつくせり風に見えるが、では現在のホームページ製作はどうなっているかと言えば、いかに表現力に優れ、機能性が高く、他には無い魅力的な内容のサイト構築ができる物であるかが、望まれている。無料ホームページにしても、実際は無料ホスティングサービスと言っても良いレベルにまでなってきており、CGI(Perl),PHP,ASP,Javaなどの言語や、あらゆるホームページの無料素材を使って、唯一無二の存在としてのオリジナリティーの高いホームページが作れる物が望まれている。故に、多少、敷居が高く、安定性が低かろうとも、自由度の高い自宅サーバー系の無料ホームページが人気が高く、募集と同時に定員状態と言うものすらあるほどだ。故にトラフィックが爆発的に増加し、サイト閉鎖においやられる自宅サーバー系の無料サーバーも少なくは無いが…

そのような流れの状況の中で、幾ら簡単だからと言うだけで、皆がblogに流れると言う事は考え難い。では、ホームページ製作初心者のみを考えた場合どうか。これも、実は、日本にはまだ、ADSLなどが微塵も無かった、ナローバンド全盛の頃から普及している、ガイアックス系を代表する、無料簡単ホームページと言う、blog同様にツール不要でそこそこのホームページが製作できる物がある。ウェブページだけで無く、掲示板、チャット、日記などのウェブツールが付属し、訪問者の足跡が残る事で、”足跡返し”などと言われたように、来てくれた人のHPに訪問してあげて、それでコミュニケーションが広がり、友達もできると言う優れた物で、一時期は著名ポータルサイトも含め、非常に多数の企業サイトがガイアックス系無料ホームページに参加していた頃もあるが、今は、どのような者でも、簡単に参加できる自由で開かれたコミュニティーという弊害から、管理が難しく、一部の著名コミュニティーを除いて、一時期のような凄まじい賑わいは無い。話をblogに戻すが、そのような無料簡単ホームページが存在し、しかも参加者増加のキャンペーンを継続する中で、ネット初心者が、blogへと大々的に流れると言う事もどうかと考えられる。

 余談だが、ホームページは、一般的には”ホームページ作成”と言う。しかし、当サイトでは”ホームページ製作”としている。これは、現在のホームページが単なる文書作成だけでは無く、創造的な物の生産としての位置づけが大きいと解釈している故である。

blogはコミュニティーサイトや掲示板を凌駕するか?

 blogの勢いに戦々恐々としているのは、同じく個人情報発信用途の無料ホームページだけでは無い。多人数の参加者を有するコミュニティーサイトや巨大掲示板サイトなども同じだ。実際、Alexaのトラフィックランキングを見ると、2004年に入ってから、上位100位内のコミュニティーサイトのランキングが大きく落ち込みを見せている。また、無料掲示板のレンタルサイトも広告収入減少に伴う、サイトの閉鎖傾向が顕著だ。逆に、無料blogのレンタルサービスが増加しており、ポータル系サイト以外も無料blogの運営を開始している所も増えてきた。その理由の1つに、bloggerの増加が影響していると考えてもおかしくは無いだろう。需要があるのだ。

 しかし、現状の多くの掲示板と現状の多くのblogには明らかに違う点がある。これには、掲示板の異なる性質から2つ分けて考えてみる必要がある。

1つは、個人や小さなコミュニティーサイトの掲示板の場合だが、掲示板への投稿やレスがあった場合、例え、それが匿名による物であっても、レスを返してしまいがちになる。理由は、個人或いはそのサイトの訪問者の弁として見るからだ。『私(達)のホームページ来て下さった方は歓迎しよう』と言ったような気持ちによるものだ。しかし、blogの場合、人やサイトに対してでは無く、その記事に対してのコメントになる故に、それに対するコメントは、自己主張が強い、論争好きの者でも無い限り返さない傾向が強い。感想や意見が誰もが違うのは当たり前なのである。ならば、もめるような恐れのある事はしたくは無い。よって、掲示板のような盛り上がり方はあまり見せなくなる。

『私のホームページを楽しんで行ってくださいね』とか『また来てくださいね』と言った掲示板の短いコメントは良くみるが、同様なコメントをblogで見る機会は殆ど無い。私のblogにも来て下さいと言うような宣伝まがいの投稿なら見かける事が増えてきた。

もう1つは、巨大掲示板などの多人数が参加する、大半が発言者がどこの誰かわからない匿名掲示板の場合だが、blogと異なるのは、そこに個人的な力学が介在し辛い事だろう。blogと異なり、掲示板では誰もが自由なテーマで発言できる事もそうだが、パーソナリティーの主張が不要な共有している場であり、blogのように、自分のblogにも来て欲しいような発想は生まれない。共有している掲示板が賑わい、その一連の投稿や文章のキャッチボールの中でネット参加者の一体感や、バーチャルな嘘の部分、或いは本当の自己の性質、姿を曝け出せる魅力と言う物があって成り立っている。

基本的に、blogは情報発信ツールであって、個人の記事として見てしまう。人気のblogでも、記事の投稿が途絶えれば、人がよりつかなくなる為に、この点はホームページとしての性質に近い。ところが、(巨大)掲示板は共有された投稿文書の集合体で、記事が減れば自分が投稿して賑わそうと努力する事ができる参加型ツールで、根本的に異なっているのだろう。特に安全な形で匿名で自己主張できる一体感が得られる共有できる場と言うのは、自己主張型社会の欧米とは異なり、戦後教育、社会資本重視、或いは村社会的農耕民族としての色合いが今尚濃い、日本人向きなのではないだろうか。

blogは日記レンタルを駆逐するのか?

 blogに最も似たスタイルのネットサービスと言えば、無料日記レンタルだろう。写真や文章を併せて掲載できるカレンダー付きの無料レンタルサービスで、コミュニティー形式の物も少なく無い。bloggerの増加で、最も穏やかなる状況では無いと推測されるネットサービスの筆頭ではないかと思われる。しかし、今のところ、無料日記レンタルのサイトが閉鎖数はそれほどでも無い。理由については、2つ考えられる。

1つは、無料日記は、何らかの理由で日記CGIが使えないホームページのオーナーが、ホームページノコンテンツとして使う物で、blogのように、その存在自体がホームページと言う物は必要無いのだろうと言う事。

もう1つは、自己完結型を望む場合、blogを辿って来たようなホームページの訪問者以外から、ホームページを全く見ずに、トラックバックのような、関連性のある記事のリンクを貼られたり、コメントを書かれるのを嫌がると言う事も考えられる。いわゆる、”荒らし”を嫌がるのと同じ感覚ではないだろうか。好きで書いてる個人の日記なのだから、どこの誰ともわからない者に、あれこれと注釈されたくは無いと言う気持ちは納得できるだろう。

そもそも、日本ではblogが上陸する以前から、(無料)日記レンタルのサービスは確立していたが、米国などでは、日記レンタルなどのサービスが無い土壌にblogが現れたために大々的に普及したと言われる。逆に言えば、無料日記レンタルサービスが普及している日本では、blogが普及しないと言う言い方もできるのかも知れない。

日本でblogは流行らないのか?

 では、日本ではblogは流行らないかと言うとそうでも無い。と言うか、予想以上に急速に参加者が増加しているように思える。1つには、今のトレンドや興味本位と言うのもあるだろうし、上位のポータル系サイトの力関係、囲い込み戦略や、それに基づく”キャンペーン”の類なども影響しているように思えるが、それらとは違う面の影響も大きいのではないかと推測している。

何かと言うと、blogをやっている人が、難解で小難しい講釈を垂れたり、議論好きで相手のblogを論破するのが好きな者ばかりでは無く、”子育てで悩む母親”や”学校生活の愚痴”など、実は自分と等身大で親近感を感じる者が書いている日常的なblogであったり、或いは自分の好きなタレントなどがblogを書いていたりする物などのほうが、遥かに増加傾向にあり、それらを見る機会のほうが増えている事だ。検索エンジン(Google)などで特定のキーワードで検索しても、文才に長けた識者にしか書けないようなblogを出し抜いて、たわいも無いような誰でも書けそうな記事や、『好き』『嫌い』だの1行程度の感想程度の内容のblogでも上位で掲載される物も珍しく無い。特に、明確なテーマなどを決め、それにそった高尚な記事を書く必要など微塵も無いのだ。言わば、携帯メール感覚でblogができる事を、これでもかと言うほどに見せ付けられてしまうと言う事だ。この程度ならば、自分でもやれそうだと感じる、blogの敷居の低さが増加の原因の1つになってきているのではないだろうか。

また、blog本来の使われ方では無い、記事主体の使い方では無い物も目立つ。それは、無料アルバムであったり、無料お絵かき(掲示板)であったりして、文章などが一切付随しない物を見る機会も少なくは無い。blogの定義など一切おかまい無しで、自分の好きなように使って、誰かに見て貰うつもりも何も無いような自己満足だけのblogも見る事も少なく無い。

更に、掲示板訴訟の多発やコミュニティー系掲示板などの年齢制限などに代表されるように、何かと制約が厳しくなってきたウェブサービスにおいて、どう言う訳か制限が厳しく無く、自由にコンテンツを掲載し、情報発信ができるのも、blogの魅力だろう。

今、blogが流行っている理由は、よく言われてきたblogの利便性などによるものでは無く、

『なんだか良くわからないけど、面白そうな物だぞ、これって。俺もやってみよう』

と言うノリ的な部分が大きいように思えてならない。

インターネットは人である。理屈はどうあれ、人のハートを掴めない物は、生き残れない。日本におけるblogは、米国での国際的事件の真実を草の根的に伝播した事により一躍注目を浴びたような普及の仕方を辿っているようでは無いと推察している。

blogの未来は

果たして数年後、blogが残っているかどうか、そんな事は知った事では無い。面白くて便利でイイと思える物なら残っているし、皆が飽きたら、忘れ去られた存在になっているだろう。時流に乗っただけの力づくのお仕着せのような戦略的なアイテムであるならば、ブームが去るのも早いだろう。

blog風のデザインにしても、今でも普通のホームページでもできる。そう難しい事でも無い。唯一、blogで目新しい機能はトラックバック程度だ。この機能が一般のホームページや掲示板につかないと誰が言えるだろうか。これだけblogが人気が出れば、blogとも掲示板とも言えないような、両方のメリットを持った新たなスタイルの掲示板を作る事など、スキルのあるチャレンジャーなら誰でもやってみようかと言う気になるだろう。新たな技術やアイデアと言う物は、特定の物だけに反映される訳では無い。既に、そう言う物のプロトタイプもネットを徘徊すれば幾つか見る事ができる。もしかすると、blogを遥かに凌駕するほどの存在になるやも知れないとまで思わせる物も存在する。blogの大きなアドバンテージがどこにあろうか。

しかし、今でも、blogは既存の人気のウェブサービス・ウェブツールを取り込みながら飛躍的な速さで進化を続けている。既に、情報発信ツールと言う位置づけすら、微妙に疑問を感じてしまう物も出てきている。簡単HPの域を超えた、blogと言う時流に乗った名を借りた、総合HP製作サービスとも解釈できる物で、何でもアリだ。或いは、ガイアックス系無料ホームページのネット広告でも、”blogするなら…”となってきている。見かける度に、『おぃおい、そりゃ無料ホームページだろう』と心密かにツッコミを入れている。blogの基本条件のトラックバック機能すら無い物でもblogと言われれば、本当に、blogってなんなんだ状態なのだが、そんなアグレッシブな状況の中で、参加者が増加しているのだろう。

さて。私は、ホームページが無くなると困る。掲示板が無くなっても、多分困る。しかし、現在、blogが無くなってもそんなには困らない。と言うか、多分困らない。数年後、無くてはならないような存在にblogがなっていたら、blogは消える事は無いのだろう。果たして、blogは無くてはならないほどの存在になるか、blogの何が無くてはならない存在と言わしめるほどの物になるのか、blogが他のウェブサービスを駆逐し主導権を握るほどの素晴らしい物になるのか、或いはガイアックス系無料ホームページのような、一時期の流行で終わってしまうのか、それをネットの住人の一人として観察していこうかと考えている。

お約束ごとだが、題目通り、本文は、愚人のおたわごとであり、あくまで息抜きの殴り書きです。

無料サイト集 Kooss (run)記

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